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2021.10.12

腰痛と不良姿勢や背骨の歪み、脚長差との関係 ー実は腰痛との関係は...ー

側弯

こんにちは。鍼灸Tadauchi 院長の唯内です。今回のテーマは腰痛と姿勢や背骨の歪みの関係。

腰痛と言えば、誰しもが一度は経験したことのある症状と言っても過言ではないほど、一般的な症状だと思います。

少し古いですが、日本整形外科学会による腰痛に関する全国調査報告書2003年版によると、調査時点で約30%の人が腰痛を有しており、治療を要するほどの腰痛を経験したことがある人は約50%いたそうです。治療をするほどではないが、腰痛を我慢しながら生活しているという人も合わせると、相当数の人が腰痛経験者だということは想像に難くないと思います。

腰痛の原因は大きく特異的腰痛非特異的腰痛の2種類に分類されます。

特異的腰痛はレントゲンやMRI等の検査で腰椎椎間板へニアや腰部脊柱管狭窄症、骨折、癌の転移など、原因を特定できる腰痛です。

非特異的腰痛は、種々の検査でも原因を特定できない腰痛で、腰痛の約80%以上が非特異的腰痛だとされています。

ほとんどの腰痛は何が原因で痛いのかを特定できないとされていても、目の前には腰痛でお困りの患者さんがみえるので、セラピストは姿勢を診たり、脚長差を診たり、筋力や動作の仕方など、様々な手段や方法で評価して原因を探し出し施術にあたります。

腰痛治療のため、整形外科や接骨院、整体院などに行かれた方は「姿勢が悪い」とか「骨盤や背骨が歪んでいる」とか、「脚長差がある」など腰痛の原因について説明されたことのある方もみえるのではないでしょうか。

今回ご紹介する文献は、腰痛に対して姿勢や身体の構造、生体力学的に評価するのは科学的にどうなの?という普段我々セラピストが、一般的に行っている評価や治療に一石を投じる内容の文献となっています。

長文なうえに拙い文章でストレスフルだと思いますが💦示唆に富む内容になってると思いますので是非、最後までお付き合いいただけたらと思います。

それでは👇

The fall of the postural-structural-biomechanical model in manual and physical therapies: Exemplified by lower back pain

序論

姿勢-構造-生体力学PSB:postural-structural-biomechanical)因子を是正することで、腰痛などの症状が改善し、再発や慢性化を防ぐことができるという理論が現状では一般的ですが、本当に人間の物理的な形状、姿勢、構造、生体力学的変化が腰痛の原因になり得るか、という疑問を投げかけています。

私も腰痛患者を診る時、姿勢の評価はルーチンで行います。

腰痛の進行とPSB因子との関連があるか

過去数十年間でPSB因子と腰痛との関係を調査する様々な臨床研究がなされてきましたがある調査で、腰痛グループと無症候グループとを比較していますが、腰痛の原因までは言及できておらず、腰痛の原因が必ずしもPSB因子であるとは限らないとしています。
たいていの場合、PSB評価は患者がすでに腰痛を有した状態で行われており、PSBモデルは腰痛の原因ではなく身体が腰痛に対応するための結果ではないか、と言われています。

PSB因子に問題があるから痛いのではなく、痛いからPSB因子に変化が出てるわけか。

脊柱の湾曲と非対称性、動きについて

10代の若者では、姿勢の非対称性、胸椎後弯、腰椎前弯と成人期での腰痛発症との関連性はなかったとの報告や(Papaioannou et al., 1982; Dieck、1985; Poussa、2005)、妊娠中の腰椎前弯および骨盤前傾の増加も腰痛と関連はなく(Franklin&Conner-Kerr、1998)、妊娠中の腰痛発症の予測因子は、BMI、過可動性と無月経歴、低所得層、妊娠前の腰痛歴などだったとの報告(Orvieto et al。、1990; Mogren&Pohjanen、2005)、成人で腰椎前弯の程度や脊柱側弯症の存在は、腰痛との関連を示せなかったとの報告 (Dieck,1985; Norton,2004; Haefeli et al.、2006; Christensen&Hartvigsen,2008,syst.rev.)、局所的な腰椎の角度や可動域と、将来の腰痛発症との関連性は不明(Hellsing,1988b; Burton&Tillotson,1989; Hambergvan Reenen,2007,syst.rev.;Mitchell et al., 2008)という報告から筆者は、姿勢の非対称性やマルアライメントと腰痛は一概に関係しているとは言い切れないとしています。

畑でえらい腰の曲がったお爺さんやお婆さんを見かけるけど、みんな腰が痛いとは限らなさそうですもんね。

分節の病理力学

分節病変によってもたらされる生体力学的変化が腰痛を引き起こす可能性はあるか、という問題ですが、椎間板変性と非特異的腰痛との関連は示唆するが、X線およびMRI所見では将来的な腰痛の発症を予測できない(van Tulder et al., 1997, syst. rev.Waddell & Burton, 2001, review)という報告や、椎間板変性と腰痛との明確な関係は示せない(Savage et al., 1997;Borenstein et al., 2001; Carragee et al., 2005; Jarvik et al., 2005; Kanayama et al., 2009; Kalichman et al.,2010)という報告、遺伝的に腰痛に関与する遺伝子が椎間板変性にも関与することを示唆し、腰痛は脊椎の機械的変化によるものではなく生物学的要因によるもの(Battie et al., 2007)とした報告、遺伝的要因は脊柱の形状との関連はないが、コラーゲンの変化や個人の免疫修復システム・プロセスは関連している(Paassilta et al., 2001; Valdes et al., 2005; Battié et al., 2009; Videman, 2009)という報告、脊椎変性の47%〜66%が遺伝的および環境要因によるもので、重労働や激しいスポーツが原因となる変性は2%〜10%であることが双子の研究で実証された(Battié, 1995; Battié et al., 2009; Videman et al., 2006, 2007)などの報告から、分節の病理変化は遺伝的、環境的に起因し機械的ストレスなどが原因とは言い切れないということが推測できます。

脊椎や椎間板の病変は、機械的なストレスよりも遺伝的・環境的要因の関与の方が大きいということか。

脊椎のニュートラルゾーン

脊柱の中間域、いわゆる負担の少ないと思われる理想の位置という概念ですが、数学的モデルと死体実験から導き出されたもので調査結果を直接モデルに適合することはできない(Gracovetsky, 2005)という報告や、ニュートラルゾーンの変化における機械的変化とLBPとの相関関係を示す研究は存在しない(Leone et al., 2007, review)という報告から、脊椎のニュートラルゾーンについては少し懐疑的に述べています。

言われてみると、そもそも骨格は個人個人で違うから理想的な中間位はここ!と断定するのは難しそう。

脊柱以外の構造について

脊椎に加え、身体の脊椎以外の構造と腰痛との関連性についても言及されています。

骨盤の傾斜や非対称性と腰痛との間には相関関係はないこと(Dieck, 1985; Levangie, 1999a, b; Fann, 2002; Knutson, 2002)や、人口の約90%が平均5.2mmの脚長差があると推定され、約20mmに達するまで臨床的に重要ではないこと(Papaioannou et al., 1982; Grundy & Roberts, 1984; Dieck, 1985; Fann, 2002; Knutson, 2005, review; Gurney, 2002, review; Knutson, 2005, review)、脚長差と腰痛との間には相関関係が見られなかったという報告(Hellsing, 1988a; Soukka et al., 1991; Nadler, 1998)、また病気や手術の結果として後天的に脚長差を生じた患者の評価でも、脚長差と腰椎側弯、腰痛との相関性は低かったという報告(Yrjönenet al., 1992)(Gibson et al., 1983; Edeen et al., 1995; Parvizi et al., 2003)(Giles & Taylor, 1981; Gofton, 1985; Helliwell, 1985; Friberg, 1983, 1992; Brady et al., 2003, review)があり、脚長差や下肢筋のタイトネス、足部アライメントの影響や体重過多なども、必ずしも腰痛の原因とは言い切れないと推測できます。

神経筋の要素

ここでは体幹筋の運動制御、筋機能と姿勢、それらに関連する特定の神経筋構成要素と腰痛との関連が報告されています。

体幹筋持久力の低下はLBPに関連していないこと(Hamberg-van Reenen, 2007, syst. rev.)や、伸展時の左右の傍脊柱筋同士の不均衡とLBPの間には関連がないこと(Reeves et al., 2006; Hamberg-van Reenen, 2007, syst. rev.; Van Nieuwenhuyse et al., 2009)、またこれらの特定の筋のコントロールの変化は、すでに腰痛を患っている個人でのみ観察されたもの(Lederman, 2010b, see Discussion; Lederman, 2010a, see Discussion)で、これは腰痛の原因ではなく結果である可能性の方が高いと考察されています。

姿勢行動要素

人がいかに「正しく」自分の体を使えているか、仕事やスポーツ活動での姿勢に関するストレスについてもよく評価される項目の一つですが、それが腰痛の原因となり得るかについて言及しています。

仕事に関連する姿勢(長時間の立った姿勢、曲がった姿勢、ねじれた姿勢、ひざまづいたりしゃがんだ姿勢、仕事での長時間の座っている姿勢など)と腰痛との関連性は乏しい(Hartvigsen et al., 2000, syst rev.; Bakker et al., 2009, syst. rev.; Chen et al., 2009, syst. rev.; Roffey et al., 2010, syst. rev.; Wai et al., 2010syst. rev.)という報告や、スポーツやエクササイズ、座ったり長時間立ったり歩いたりといった身体的な余暇活動と腰痛とは関係がないという報告(Bakker et al., 2009, syst. rev.)などから、作業姿勢や余暇活動は腰痛との関連性は低いと推察できます。

PSB評価による腰痛の予測について

理学療法士によって調査された若年労働者に関する最近の前向き研究では、PSB因子とLBPの将来の発症との相関を示すことはできなかった(Van Nieuwenhuyse et al., 2009)と結論づけられています。

ここでの要点

・姿勢と構造の非対称性は腰痛を予測できず、腰痛の原因である可能性も低い。
・脊椎のバイオメカニクスにおける局所的および全体的な変化は、必ずしも腰痛の原因にはならない。
・PSBモデルは、腰痛の原因を理解するのには適さない。

この時点で既に、これまでの自分の評価方法に一石投じられた感が否めません💦

機械的でなく生物学的な重要性について

生物学的に構造(脊椎)は自己修復が可能で、必要に応じてストレスなどに適応するとされています。それは、私たちの感情や意志や行動の影響を大いに受け、人の認知と行動は腰痛の回復に重要な影響を及ぼします。これにより、従来のPSBモデルに代わる腰痛の生物心理社会モデルが登場しました。

生物学的予備能と耐性について

人体が機械やコンピューターのように、完璧な精度で機能しなければならないというユートピア的な期待を持たれがちですが、後述する研究から明らかなように、人体の生物学的システムには無症候性に様々なストレスに対応するための予備能が備わっています。

この予備能で、PSB因子を有していても脊椎が無症候性でいられる理由が説明され、人はPSB因子を許容することができます。

部分的または全層の腱板断裂は、40歳以上の無症状の個人の3分の1に見られこれらの構造的損失は、痛みや肩の機能の損失とは関係ないとする報告(Sher et al.、1995)や、立位時、脊柱の自動安定化は体幹屈筋と伸筋の非常に低レベルの共収縮によって達成され、32 kgを負荷した場合、1%未満のMVCが3%MVCまで上昇すると推定できる. 腰部外傷では、無負荷モデルと負荷モデルでこれらの値がMVCで2.5%だけ増加すると推定されるという報告(Cholewicki et al。、1997)などから、人は生物学的にストレスや損傷を許容、耐容する能力があり、メカニカルストレスや組織損傷が直接的に痛みや機能の損失に繋がるとは限らないことが示唆されます。

何も症状のない人をランダムにMRI撮っても、たまに椎間板ヘルニアの人とかいるみたいです。椎間板ヘルニア=痛いとは限らないということですね。

PSBモデルの譲歩

PSB因子が生物学的予備能を超える場合があります。それは重度の側弯症や重度の腰痛、または高度な神経根の圧迫と下肢の痛みなどのようなPSB全体的なアンバランスによるものや、極度な物理的ストレスによるものです(Beattie et al., 2000; Haefeli et al., 2006)。スポーツでもPSB因子と極度の身体的要求が、腰痛発生の可能性を高めることがあります(Ogon et al., 2001; Iwamoto et al., 2004)が、これらの結果にどう対処するか(PSBをコントロールするか、トレーニングやスケジュール管理を修正するか)ということに関しては課題が残ります。
臨床管理に関しても非対称性やアンバランスが重度な場合、徒手療法や運動療法でそれらを是正できる可能性は低く、非対称性やアンバランスが軽微または中程度の場合は、患者の腰痛の原因になる可能性が低くなります。

ここでの要点

・病状は個人の生物学的・心理学的範囲内で構成され、生体力学的因子の関与は不明。
・身体のシステムには、非対称性や欠陥があっても無症候性に存在できる予備能があります。

あらゆるストレスに対しても、症状を出さずにやり過ごせる能力が人体には備わってるんですね。腰痛と心理的学的問題も無視できませんね。

3つの臨床的ハードル

第1のハードル
PSB因子が腰痛に寄与するレベルを特定、定義することは困難で、個別に予測することは不可能。

第2のハードル
PSB因子を評価する検査、特に脚長差、組織の質感、骨盤の角度、個々の椎骨の位置関係などは、妥当性や信頼性が乏しい。(McCaw&Bates, 1991; Mannello, 1992; Panzer, 1992; Levangie, 1999a, b; Hestbaek& LeboeufYde, 2000, syst. rev.; Dunk et al., 2004; Seffinger et al., 2004; van Trijffel et al., 2005; Hollerwöger, 2006; May et al., 2006; Paulet&Fryer 2009)

第3のハードル
PSB因子を変化させるのに特定の手技などは効果的なのか、ということです。
脚長差、骨盤の傾き、脊椎の位置、および脊椎の弯曲は、特定の治療法のみで恒久的に変化させられるのか疑問が残ります。筋骨格系を恒久的に変化させるには想像以上の身体的過負荷が必要で、これまでに説明してきたPSB因子の多くを変化させるためには、かなりの労力が必要で、患者の経過に影響を与える可能性は低いといえます。

以上3点より、PSB因子の変化を目的とした治療全般への投資は非合理的だと言及しています。

ここでの要点

・PSBモデルでの臨床評価は、腰痛解釈を更に複雑にしてしまいます。
・PSB因子の観察または物理的評価は、腰痛の原因を解明する上では価値が低いといえます。
・徒手検査や客観的検査によるPSB因子の評価は信頼性に疑問が残ります。
・そのような評価は多くの場合不要で、臨床診療から除いても大丈夫ですが、深刻な病態の鑑別のために用いる場合はそれに限りません。

確かに骨のズレや歪みがあったとして、それを徒手の力で治せたら、走ったり跳んだりしたときの衝撃で直ぐにまたズレてしまいそう。もしかしたら徒手で治してるのは骨のズレや歪みではなく、違う対象なのかも。

実践の意義

これまでのエビデンスから、PSB因子の評価項目の多くは患者の腰痛発症の原因を説明できる明確な意義があるとは言い難く、これはPSB関連の検査がほとんど不要であることを意味します。

さらに、生物学的、心理的、社会的要因を評価することで、より良く腰痛の予後を予測できるという報告(Carragee et al., 2006)や、腰痛の約45%〜55%は遺伝的要因に起因するという報告(Battié, 1995; Paassilta et al., 2001; MacGregor et al., 2004; Valdes et al., 2005; Videman et al., 2006、 2009a, b;Battiéet al., 2007, 2009)、また腰痛イベントの多くが、性別、心理学的テスト、喫煙の問題など、生物心理社会的要因によってよりよく予測できるという報告(Carragee et al., 2006)など、これらの報告からPSBモデルでの解釈は、腰痛の理解からむしろ遠ざかる可能性さえ懸念されます。

PSB因子と腰痛との関連性の欠如は、治療法の選択にも重要な影響を及ぼします。

そもそも腰痛が無くてもPSBに問題があると思われる個人は存在し、無症候性の個人に治療を提供する意義があるのかは疑わしいです。

これからの研究と治療は、社会的、職業的および娯楽活動への患者の参加を増やすことに向けられるべきで、PSB因子を改善するために治療を提供し続けるよりも現実的です。

同時にPSBモデルが主流である多種多様な徒手療法や理学療法におけるセラピストの教育や、PSBモデルに代わる臨床モデルの構築が重要です。

要約と結論

1.PSBの非対称性と欠陥は正常な変化であり、病理ではありません。
2.経筋および運動制御の変動も正常な反応です。
3.身体は正常な機能や症状を悪化させることなく、変動に耐える予備能を備え持っています。
4.病理力学では症候学を決定できません。
5.既存のPSB因子と腰痛の間に関連性はありません。
6.PSB因子を修正することは臨床的に困難で、腰部の状態の今後の経過を変える可能性は低いです。
7.この結論は、身体の他の部位の筋骨格系にも適用できます。

いかがでしたでしょうか。

長文で、大変読みにくい文章だったと思いますので、先ずはここまで用でいただけたことに感謝です✨

確かに現在、セラピストの大半はPosture:姿勢を診て、Structure:構造の問題を評価し、Biomechanics:生体力学の観点からどの部位に負担が大きくなるかなどを推察します。

少なからず私はそうです。

実際、PSB因子中心の評価 ⇨ 効果判定 ⇨ 改善 という経過を辿るなら良いのですが、良くならない、あるいは増悪するというケースもあります。

同時に社会的、心理的影響も評価し、それらに対してもアプローチする必要性を感じました。

また、最近巷では筋膜リリースや骨盤矯正や猫背矯正という言葉を流行のようによく目にします。
その治療法自体を批判するつもりはありません。実際にその手技で良くなるクライアントの方もみえます。ただ、クライアントの方々が良くなるプロセスとして、本当に骨が矯正されて良くなったのか、それともほかの因子が影響したのかを痛み治療のプロとして追及し続けていく姿勢が大切であると感じました。

それでは今回も最後までお読みいただきありがとうございました(^_-)-☆

関節痛・腰痛・肩こり、ご相談ください
鍼灸Tadauchi
鍼灸師・理学療法士   唯内 喜史

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