今回は東洋医学でいうところの気・血・津液ってなに? part1 気についてということで、初めに気・血・津液について簡単に触れ、その後気について解説しようと思います。
気・血・津液
東洋医学では、人間の体は「気」、「血」、「津液」という基本物質によって構成され、生命活動が維持されていると考えられています。「気」は生命活動のエネルギー源、「血」は血脈中をめぐって栄養を全身に運び精神活動を支える物質、「津液」は血液以外の水分で人体を潤す体液の総称です。
臓腑、経絡などが正常な機能を営むためには、気・血・津液が重要な役割を担っており、また、気・血・津液の生成と代謝は、臓腑、経絡などの生理活動に頼っています。
ここから気・血・津液、精のうち気について簡単に解説していきます。
気の概念
私たち日本人の日常会話の中でも、「気」という言葉は頻繁に使われています。例えば、気持ち、気分、気合、気力、気に入る、気まぐれなど、その大半の物が精神的要素の多いものに関係しています。そんな気をどのように考えたらよいのでしょうか。東洋医学では、気を物質としてとらえる考えが多く、気が人体をつくり、生命活動を維持していると考えます。
気の生理作用
気には推動作用、温煦作用、防御作用、固摂作用、気化作用という5つの作用があります。
以下にその5つの作用を簡単に説明します。
推動作用
推動には推進や促進という意味があり、気は臓腑組織の活動を促進したり、血脈や経絡の流れを推進し、これを「推動作用」と呼びます。また成長発育にも関与し、うまく機能しないと成長や発育の遅れ、血や津液が体中をめぐらず停滞してしまいます。
温煦作用
一般に種々の活動性は冷えると減退し、温まると増大します。気の温性で体温を維持し、臓器組織を温めその活動を促進します。うまく機能しないと異常な寒さを感じたり、手足の冷えなどの症状が現れます。これを「温煦作用」と呼びます。
防御作用
気は体表を保護し、外邪との侵入を防ぐとともに、侵入した病邪と戦い外へ追い出す機能を備えており、これを「防御作用」と呼びます。
固摂作用
気・血・津液などの人体構成物質が必要以上に体外に流出しないようにとどめように調節したり、汗や尿、精液の排泄をコントロールします。これを「固摂作用」と呼びます。
気化作用
気には血を精に変化させたり、精を血に変化させたりと、気・血・津液・精などを相互に変化させる働きや、津液を代謝過程で汗や尿に変化させ排泄する機能があり、これを「気化作用」と呼びます。
人体に分布する4つの気
人体中の気は、存在する場所や働きで元気、宗気、営気、衛気の4つに分類されます。
元気とは
最も重要で基本的な気で原気や真気ともいわれます。主に先天の精が変化したものですが、生後は後天の精によって補充されます。全身いたるところに分布して、それぞれの組織器官の活力を旺盛にします。人体の成長発育を促進したり、生命活動の基本となるものになります。
宗気とは
胸中にある気で、心拍運動を促進したり、経脈内での気血の運行を主ったり、呼吸活動を補助して発声を主ったり、肺や心など胸部にある臓器の働きに関与します。また、見る、聞く、話す、動くといったからだの機能にも強く関係します。
営気とは
栄養分が多く栄養作用を強く示すため「栄気」とも呼ばれます。経脈を通し血と一緒に循環し全身を栄養し潤します。血液の組成成分で、営気と血をまとめて営血とも呼ばれます。後述する津液とともに血液を化生します。
衛気とは
体表から体内までをくまなく分布し、体表面では肌表を保護して、外邪の侵入を防いだり、汗孔の開閉に関与して体温調節などを主ります。体内では臓腑組織を温めることによってその活動を活発にします。
以上、「気」についてその働きと種類を簡単に解説しました。
気は人体を構成する物質なので、消耗したり補充したりできます。気を消耗しすぎて足りなくなってしまった病人には気を補充し、邪気が多い病人からは邪気を取り除く、といった非常にシンプルな考えでツボを選んだり(選穴)、鍼灸治療に応用します。
次回は、気・血・津液の血について解説します。
それではまた次回をお楽しみに(^.^)/
文献
教科書執筆小委員会:東洋医学概論.医道の日本社
関口 善太:やさしい中医学.東洋学術出版社
兵頭 明 監:カラー版徹底図解 東洋医学のしくみ
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鍼灸Tadauchi
鍼灸師・理学療法士 唯内 喜史