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2021.08.21

ファシア(fascia) ファシアについての解説

ファシアとは

 

こんにちは。院長です。
本日のテーマはファシア。
難解なテーマなので少しずつお話ししていきます。

みなさんファシアってご存知ですか?
ファシア、聞きなれない言葉ですよね。

では筋膜はどうでしょう?
最近、巷で筋膜リリースや筋膜ストレッチ、筋膜はがしなどという単語をよく目にするので「あぁ、筋肉を包んでる膜かなんかだよね?」くらいには知られているのではないでしょうか。

ファシアはその「筋膜」、として扱われていることが多いのですが厳密には違って、筋膜はmyofasciaといってファシアの概念の内の一つの要素にすぎません。「筋肉」だと耳馴染みもあり、「筋肉痛」など痛みとの関係も結び付けやすいので、便宜的に「筋膜」という言葉が使われているのかな、と個人的には思います。

ファシアが最近注目されているのは、本態性高血圧症や原因のはっきりしない痛み、シビレなどの感覚障害、栄養障害など、医学的にわかっていない現象も、ファシアの構造や機能の解明が、それら現象の解決にも繋がるのではないか、と期待されているからです。

ファシアについてはまだまだ不明な点も多く、これから見解が変ったり、はっきりとは言い切れない部分もあるのですが、皆さんに出来るだけ分かりやすく、可能な範囲でお伝え出来たらと思いますので宜しくお願い致します。

ファシアの定義

実は、ファシアの定義は国際的にもまだ議論中なんです(;・∀・)

和訳の問題であったり、同じ言葉であっても地域地域でその意味が異なっていたり、同じ対象物を見ていても個人個人でそれぞれ認識に誤差があったり、とファシアに関しての定義が決まらない理由は様々あるようですが、現時点ではfasciaは、全身に連なる解剖学的にも生理学的にも重要なネットワーク構造および機能をもつ臓器(organ)であり、さらには器官系(system)であるといことが世界的なコンセンサスとして認識されているようです。

日本では一般社団法人日本整形内科学研究会(JNOS)がファシアの定義を「ネットワーク機能を有する『目視可能な線維構成体』」と提案しており、一般向けの平易な説明として「全身にある臓器を覆い、接続し、情報伝達を担う線維性の立体網目状組織。臓器の動きを滑らかにし、これを支え、保護して位置を保つシステム」と表記しています。

ファシアは体中の臓器を隈なく覆っている臓器で、他の臓器の位置を保持したり、臓器同士の動きを滑らかにしたり、情報伝達の役割もしたり、とメチャクチャ重要な器官です。

結合組織

体内で組織と組織の間隙を満たして、それら組織同士を結合する組織を結合組織と言い、結合組織の中でも腱や靭帯、筋膜や腱膜などのように線維が密で、構成している線維が太い束をつくったコラーゲン中心で外力に対して強靭な結合組織を密性結合組織、一方、皮下組織や粘膜下組織など構成する線維や細胞は密性結合組織とほぼ同じ成分ですが、その細胞成分やコラーゲン線維の存在はまばらに存在し疎で、水分に富んだ結合組織疎性結合組といいます。

ファシアの構造

ファシアの構造はエコ―画像で確認できます。

皮下組織は浅部から深部に向かって、皮下組織の浅層、superficial fascia、皮下組織の深層、deep fascia、の順に存在しています。

superficial fasciaは皮下に存在し、脂肪を含んだ疎性結合組織の皮下組織に連続し、その中を神経や動静脈、リンパ管などが走行します。

深層にあるdeep fasciaは密性結合組織に分類され3~4層構造を呈し、筋肉だけではなく、血管、リンパ管、骨、臓器も包み、様々な方向への張力に対応したり、滑走性を担保しています。

脂肪層は、LAFSと皮下組織深層を構成するPAFSの2層構造を呈しています。このうちLAFSは血管と神経に富み痛みに関する重要部位としても注目されています。

ファシアの機能

ファシアは全身を覆っており、一つ一つの筋肉がファシアで繋がっていることで、ある1つの動作が別の離れた部位にもその力や動きが波及します。

各臓器それぞれが潤滑に動けるように表面を覆っており、臓器同士を繋げ、臓器を正しい位置に固定する役割や、衝撃を吸収し、組織や臓器を保護する役割があり、神経、血管、リンパ管などはファシアで覆われることで守られています。

下の図ではカラーの部分や、組織と組織の間隙にある白いスペースもファシアを表しています。

ネッター解剖学アトラス(原著第3版)より引用

ファシアの病態

痛みとファシアの関係

筋膜の異常が原因で痛みやしびれを引き起こすものを筋膜性疼痛症候群(MPS)といいます。
異常なファシアでは、組織の伸張性の低下組織同士の滑走性の低下水分量の低下などが起こっていると考えられ、このような時、レントゲンやMRIなど各種検査で特に問題ないと判断されても、神経障害性疼痛の様な症状が認められることがあり、神経自体および神経周囲のハイドロリリースが有用となります。

ファシアとエコー画像

エコーでは筋と筋の間や、筋と骨との間、神経と筋との間、皮下組織などのファシアの状態を確認できます。

ファシアの重積像
ファシアの異常はエコー画像において局所的な「帯状の高輝度(白い)」として観察される傾向にあり、この輝度変化(高輝度)水分量の減少線維構造の高密度化などの状態であると考えられます。

ファシアの伸張性、滑走性

組織の伸張性低下組織間の滑走性低下ファシア同士の癒着もエコーでは確認できます。

エコーによりファシアの評価が行われていますが、エコーのみで異常なファシアを評価し病態を考察することは難しく、臨床においては症状、病歴、理学所見なども含めて総合的に判断、治療にあたることが肝要です。

エコーでの評価も、あくまで情報の一つ。
他の情報と統合し、解釈する必要があります。

さまざまなファシアリリース(注射、鍼、徒手)の方法

ファシアリリースにはさまざまな手法があります。
例えば、原因となっている癒着部位を直接的に手術や注射、鍼、徒手などでリリースする方法や、癒着部位周囲の結合組織の伸張性や柔軟性を改善させることで発痛源である癒着部へのストレスを減らす方法などです。
ファシアの癒着の程度、各治療法の長所短所を踏まえ適切な治療法を選択することが重要とされています。

鍼によるファシアリリース

鍼(dry needle)によるファシアリリースの特徴

①刺鍼時の痛みが少ない、あるいは無痛
②深部への直接的なアプローチが可能
③鍼が細く鍼先が鈍のため組織侵襲性が注射針よりも小さい
④局所血流の改善
⑤ファシアへの物理刺激による治療
⑥下行抑制系の賦活化

徒手によるファシアリリース

結合組織に直接的にゆっくりとした刺激を加えることで、コラーゲン配列や組織間のヒアルロン酸などの粘度を変化させ、ファシアの伸張性およびファシア間の滑走性の改善を目的とします。
具体的には筋膜を主な対象とした筋膜リリース、組織間の疎性結合組織のリリースを目的とした組織間リリース®があります。

以上、ファシア(fascia)についてその概念、解剖・生理、病態、鍼や徒手による治療について書いてきました。
原因がわからずに困っていた痛みや違和感など、ファシアへのアプローチで解決できる症状もあるかもしれません。

「もしかして私の症状もファシアが原因かも!?」、と症状でなにか思い当たるところがございましたら、鍼灸Tadauchiまでご相談ください。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました(/・ω・)/

参考文献
・木村裕明(編集主幹):解剖・動作・エコーで導くFasciaリリースの基本と臨床 第2版 ―ハイドロリリースのすべてー:文光堂、2021

関節痛・腰痛・肩こり、ご相談ください
鍼灸Tadauchi
鍼灸師・理学療法士   唯内 喜史

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