こんにちは。
春日井の鍼灸院、鍼灸Tadauchiの唯内です。
首や肩まわりの重だるさ・鋭い痛みを感じたことはありませんか?
「肩こりかな?」「年のせい?」と放っておきがちなこの痛み、実は神経の圧迫が原因でおこる可能性があるのです。

今回は「首や肩甲骨周囲の痛み」の原因について、論文を基に解説していきます。
■なぜこの研究が注目されているのか?
私たちの背骨の中には、脳から手先までつながる神経が通っています。
そのなかでも首の部分を出入りする神経は「頸椎神経根(けいついしんけいこん)」と呼ばれ、腕や手指、肩甲骨まわりの感覚や動きを支配しています。
これまで、肩甲骨まわりの痛みは、主に関節や筋肉の問題(変形や炎症など)と考えられてきました 。
ところがこの研究では、「肩甲骨周囲の痛みが、頸椎神経根の圧迫によって直接引き起こされる可能性」があると明らかにされたのです 。
■研究の内容を簡単に紹介!
この研究では、首の神経根が圧迫される「頸椎症性神経根症(けいついしょうせいしんけいこんしょう)」と診断された50人の患者さんを対象に、痛みの場所や時期、手術後の経過を詳しく調べました 。
🔹対象となった患者さんの特徴
・痛みは首や肩甲骨の周りにあり、手や腕にも症状(しびれや力が入らないなど)を伴う患者さんです 。
・平均年齢は52歳で、症状は平均7ヶ月前から続いていました 。
⇒上記の症状で、神経の圧迫を取り除く手術(単一神経根除圧術)を受けた場合、どのように症状に変化があったか。
🔹主な研究結果
・70%の患者さんで、「肩甲骨周辺の痛み」が「手のしびれや痛み」よりも先に現れていました 。
・手術後1ヶ月以内に92%の患者さんが首・肩甲骨の痛みの改善を感じました 。
・痛みの場所から、圧迫されている神経根の高位レベルが推測できることが示されました 。
■痛みの場所で「どの神経根が圧迫されているか」がわかる!
研究では、首と肩甲骨まわりの痛みを以下の5つの部位に分けて分析しました 。


【補足】C5やC6などの“C”は首の骨(頚椎=けいつい)と、それに対応する神経を表します。頚椎は全部で7つあり、上から順に「C1」〜「C7」と番号が振られています。神経根は8本(C1〜C8)あり、たとえば「C5神経根」は「第4頚椎と第5頚椎の間」から、「C8神経根」は「第7頚椎と第1胸椎の間」から出る神経です。これらの神経は、肩甲骨まわりや腕・手の感覚・筋力に関係しています。

■なぜ神経が原因の痛みだとわかったのか?
この研究で行われた神経根除圧術は、神経根の圧迫を取り除くもので、関節や骨の変形そのものには手を加えるものではありません 。
にもかかわらず、術後すぐに痛みが軽減したことから 、「痛みの原因は関節や筋肉ではなく、圧迫された神経根そのものだった」と結論づけられました 。

■痛みの始まりに注目!肩甲骨の痛みが初期症状の場合も
意外かもしれませんが、首や肩甲骨の痛みだけが先に現れ、その後にしびれや腕の症状が出るケースがとても多かったのです(70%以上) 。
この研究では、平均7ヶ月間首や肩甲骨の痛みが続いていたにもかかわらず、術後1ヶ月で92%の患者さんでそれらの痛みが改善したことから 、神経が圧迫されはじめたとき、最初に「首や肩甲骨まわり」に痛みを出すことがある、という証拠になります 。
■ まとめ:こんな痛み、もしかすると神経根が原因かも?
・肩甲骨のあたりがズキズキ痛む
・湿布やマッサージで良くならない
・数週間〜数ヶ月も痛みが続いている
そんなときは、首の神経根が関係している可能性があり、しびれや筋力低下がなくても、神経由来の痛みの初期症状の可能性があります。
■最後に
首や肩まわりの痛みにはさまざまな原因がありますが、「神経根」が関係しているかどうかは見逃されやすい要素です。痛みの場所が特徴的な場合、画像診断と組み合わせることで早期診断・早期治療に繋がるので、慢性的な肩甲骨周囲の痛みにお悩みの方は、医療機関で相談されることをおすすめします。
肩こり/首こり/腰痛
鍼灸Tadauchi