3ヶ月以上、腰痛に悩まされている方。
問題は腰だけじゃなくて、意外なところにあるかも。
はじめに
慢性腰痛(3ヶ月以上続く腰痛)に悩まされている方の多くは、このような経験をされたことがあるのではないでしょうか。
腰痛、特に慢性腰痛は、痛みの原因が腰の問題だけとは限らず、最終的に痛みを感知する脳の関与も大きい事がわかっています。
今回は脳(心も含む)の関与が大きいとされる慢性腰痛を、痛みについての「考え方」という側面からお話ししたいと思います。
原因が特定できる腰痛は全体の15%
現代医学で診察や画像検査などで痛みの原因を説明できる腰痛を『特異的腰痛』、一方、各種検査では痛みの原因を説明できない腰痛を『非特異的腰痛』といいます。
海外の研究調査で、身近な病気を診るプライマリーケア受信者の腰痛全体の内、非特異的腰痛は85%を占めていたとのこと。
「えっ!そんなにいるの!?」と腰痛でお困りの方は驚くかもしれませんが、この85%の非特異的腰痛の患者さんのほとんどは1~3ヶ月で症状が軽減し、腰痛が慢性化することは少ないとされています。
たとえ慢性化したとしても、医学は日進月歩で検査法や治療法が開発され、慢性腰痛のメカニズムについても徐々に解明されてきています。
最近では、脳と痛みの関係についての研究も進み、報告も多く出てきています。
腰痛が慢性化する人たちに見られる共通点
痛みが慢性化する原因は様々で、器質的な要因のほか、心理的な要因、社会的要因などが複雑に関係しています。その中でも注目したいのが心理的要因と社会的要因で、”慢性腰痛の患者さんにはある共通した考え方があり、それによって痛みを起こしやすい体質になっている”とのことなのです。この共通した考え方のことを専門的に『認知』といい、慢性腰痛の患者さんたちはこの『認知』のあやまりが生じていることが多いとされています。
慢性腰痛に悩む人に多い「考え方のクセ」
腰痛が慢性化しやすいタイプの人は、特に痛みに対して過剰な反応をしがちだということがわかっています。それはその人たちが元々持っている「考え方のクセ」によるところが大きいとされています。
認知行動療法の先駆者、アーロン・T・ベック氏は慢性腰痛患者によくみられる10のパターンとして次のように述べています。
①「全か無か」思考
痛くないときもあるのに「四六時中痛い」と言ったり、運動もやる時は適度ではなくストイックに、そして少しでも痛みが出ると落胆して全くやらなくなる、というように適度が無く、全(100)か無(0)か、シロかクロかの極端な判断、思考になっている。
②一般化し過ぎる
あるきっかけで一度でも痛みが寛解する経験をすると、「そのきっかけでないと良くならない」というように、たまたま寛解した経験がまるですべてかのように感じてしまう。
③心にフィルターをかけている
物事が思い通りにいかないと、悪い情報にばかり目を向け良い事に目が向かなくなってしまい、「この痛みさえ良くなれば...」などと考えてしまう。
④マイナス思考
良いことがあっても「今回はたまたま...」と、正当な評価が出来ず、マイナス材料にしてしまう。
⑤心の読みすぎ
長引く痛みに対して「この痛みには何か深刻な疾患がかくれているのでは」とか、「仕事について愚痴ると弱い人間だと思われる」など、物事について深読みし過ぎて悲観的な結論に導いてしまう。
⑥拡大解釈と過小評価
「自分の痛みは他の人のよりも酷い」とか「あの人の失敗はたまたま運が悪かっただけで、自分の失敗は能力がないから」などと、マイナス面をやたら誇張して捉える。
⑦感覚的に決めつける
痛みがある→動けない、痛みがある→働けない、などと何も根拠ないのに感覚的に決めつけてしまう。
⑧~すべき思考
ある行動も、きっちりやり切らなければいけない、~すべきだ、と責任を背負い、出来ないと罪悪感を過大に抱いてしまう。
⑨レッテル貼り
「自分はこの痛みには耐えられない」と固定観念やレッテルに縛られ、実際には多少痛くてもできることでもできないと見逃してしまう。
⑩個人化
誰かの不都合や不幸の原因を、原因は自分にあると思い込み、他人の責任まで背負い込んでしまう。
慢性腰痛に悩まされている方は、上記の項目から自分にあてはまる項目が無いかを確認し、日頃の行動や考え方を日記などに記してチェックすると、自分の「考え方のクセ」について知るきっかけになると思います。
「考え方のクセ」に対する対処法
自分の「考え方のクセ」に該当する項目があったら次に示した対処法を実践してみるといいでしょう。
①「全か無か」思考への対処法
全てを完全にこなすのではなく、目標を細分化して一つずつクリアしていくと、その都度達成感も得られオススメです。また、すべてを100%やりきるのではなく、目標を60~70%くらいに設定するのもいいでしょう。
②一般化し過ぎることへの対処法
失敗を数字に置き換えて考えてみましょう。例えば、仕事で失敗があったとして、その失敗に30分費やしたとしましょう。勤務時間が8時間としたときに、94%はしっかりできたということになります。数字で表すことで「いつも失敗ばかり」という考えにはなりにくくなります。
③心にフィルターをかけている場合の対処法
自分の長所や、痛くても出来ていることに目を向けてみましょう。友人や家族に聞いくと、自分の良さや長所を客観的に見直すことができます。もしくは、過去に自分の努力で達成した事柄を思い出して、なぜその時にそれを達成できたかを考えて、書き出すのも手です。
④マイナス思考の対処法
考え方の過程を、ポジティブ→ネガティブからネガティブ→ポジティブの順に変えてみましょう。例えば「今日は痛みが落ち着いているけど、たまたま調子が良いだけだ」という考え方を、「たまたま調子が良いだけかもしれないけど、今日は痛みが落ち着いてるから治るかも」というように考えるとネガティブ要素がポジティブ要素によって打ち消される効果があります。
⑤心の読み過ぎへの対処法
もし自分が相手の立場になったときに、自分は相手に対してどのような言葉がけをするのか考えてみましょう。自分に対して批判的になり過ぎていることに気付けるかもしれません。
⑥拡大解釈と過小評価への対処法
主観に影響され過ぎる傾向にあるので、出来るだけ主観は排除して、客観的な事実だけで考えるようにします。例えば「あの人は痛みが軽そうだけど、私の痛みは酷い」を「あの人も私も痛みを感じている」のように事実重視で物事を考えましょう。
⑦感覚的決めつけへの対処法
必ずしも痛みに対する感情や感覚が行動の原因になるとは限らないことに目を向けましょう。例えば普段は「痛みがあるから仕事に行けない」という人でも、今日仕事に来たら特別ボーナスを支給しますと言われたら、同じ痛みがあっても仕事にいける人もいると思います。痛いがある=できない、と考えるのではなく、痛みがある≠できない、と考えるようにしましょう。
⑧~すべき思考への対処法
あとから「~すべきだった」「~すべきだったのに、できなかった」と考え、罪悪感にかられ自分を責めてしまいがちになります。しかしそれらの行動は、習慣化していることが殆どで、やるべくしてやっているのです。なので自分を責めるのではなく、その習慣を変える工夫をしてみましょう。また、他人に対する行動を受け入れられないときにも「あの人は~すべきではない」と考えるのではなく「~したほうがより良いだろう」と考えるようにすると、自分を責めたり追い込んだりすることも減るのではないかと思います。
⑨レッテル貼りへの対処法
自他共に、悪いところばかりに目を向けるのではなく、良いところも含めて多面的に見て考えてみましょう。
⑩個人化への対処法
相手が不快な思いを経験したり、困ったりする経験は悪い事ばかりではありません。それらの行動から次に活かす学びの機会ともなります。相手から助言や手助けを求められるまでは、不要に責任感や罪悪感を感じる必要はありません。
以上の対処法を参考に、自身の行動を変化させてみましょう。
これまで長く慣れ親しんでいた考え方や行動とは、真逆のことを実践することは勇気がいることかもしれませんが、実際行動してみると「意外と大したことではないな」と体感できるかもしれません。
そのような体験を重ねることで、これまでの自分の考え方にはクセがあり、痛みも思い込みによる要素が大きかったんだと実感できると思います。
今回の内容から、自分に当てはまるなと感じた人は、まずは自分に出来る簡単なことからでいいのでチャレンジしてみてください。そんな方の腰痛の悩みが少しでも緩和されればこの上ない幸せです☆
今回も最後までお読みいただきありがとうございました(*´▽`*)
春日井市の鍼灸整体院 肩こり腰痛お任せください
鍼灸Tadauchi
鍼灸師 理学療法士 唯内喜史